昔、テレビアニメで『超時空要塞マクロス』というのがあった。地球人類と同じ遺伝子を持つにも関わらず、地球と敵対する二種類の異星人は男と女に分かれて進化した巨人族。この三つ巴の戦争が、ひとつの地球の文化によって平和の方向へ流れを変えていく……その文化とは『歌』。
そう、『歌』である。僕たちがカラオケで歌っている歌……当たり前の様に身の回りにある当たり前な文化。しかし、その『歌』の持つ力を、価値を、僕たちはちゃんと理解しているだろうか。
アニメの中で、宇宙戦争の真っ只中、『愛・おぼえていますか』という「当たり前のラブソング」を歌い続けたのは、女性アイドルでチャイニーズという設定の『リン・ミンメイ』だった。ミンメイは自らの恋も人生も、アイドルである自分の身の上も、すべてを糧として戦いの地に赴く。それは『平和』を願っての行動である。それがテレビアニメと劇場版の両方で丹念に描かれていた。
先日、銀玉先生の誘いが元で『何日君再来~イツノヒカキミカエル』というミュージカル(だよな、あれは)を日生劇場で観てきた。そこで描かれたドラマはノンフィクションを元に脚色されたフィクション大活劇だった。その舞台でen-Ray(エン・レイ)さんが演じられたヒロインは、脚色されているとはいえ、実在の人だった。そして、既に亡くなっておられる有名な方だった。
そして先日、今度はその実在の歌手のためのトリビュートコンサートがあり、今度は中野サンプラザへ出向いた。先の舞台でもご本人を演じられたen-Ray(エン・レイ)さんが参加していた。素晴らしい歌声だった。
そしてその翌日、テレビでその歌手の生涯を描いたドラマが放送された。史実に基づくドラマ。そこに描かれた彼女の人生は、涙なくして見られるものではなかった。
『テレサ・テン』という偉大な歌手、そして悲劇的な人生の終え方をした一人の歌手。彼女は『ごく普通に人生を生きたくて、ごく普通に歌を歌いたくて、ごく普通な幸せを、平和を欲した、ごく普通の女性』だったのに、数奇な運命に翻弄され、スターとなり、戦犯の様な扱いを受け、ふるさとを追われ、それでもささやかな幸せを願い、最期は病に倒れた。
『リン・ミンメイ』なら知っていた。しかし、天かけて歌い活躍するそんなヒロインが、実在していた事実に今、圧倒されている。
僕の中のヒーローがまたひとり増えた。過去の人だけど、その価値は、その存在感は鮮烈だ。
好きな歌を好きなだけ歌えるという事。そんな当たり前の幸せを、これからはしっかりとかみしめて、カラオケで歌いたいと思う。ガッチャマンを歌うにしても、それは同じだ。
(写真は舞台『何日君再来~イツノヒカキミカエル』のサウンドトラック盤。一般発売品ではないけれど、ここに収められている主題歌『川の流れの始まるところ』は涙なくして聴けない名曲!カラオケにあっても歌えないと思う。泣けちゃうから)
コメント