昨晩から横浜にある兄の家に泊まり、今朝早く兄夫婦と三人で父の家の掃除に行った。主を失った部屋は空気が澱み、ほこりとカビ臭さと、いろんな匂いでとんでもない状態だった。
冷蔵庫にめいっぱい詰まったもののほとんどは賞味期限を一年から二年は過ぎていて、だからこそ次から次へと買っては溜めるのだろう。昔から貧しい田舎に育った父は捨てるという事をなかなかしない。とはいえこの溜め込み方は異常……もしかしたら、認知症の初期症状は数年前からあったのかも……そう考えたところで作業に没頭した……というか逃げた。
半日かけて昼までに片付けを終え、クタクタになって兄の家に戻った。本当にクタクタになってしまい、兄夫婦と一緒に居るのも疲れたので、早々に引き揚げた。
大船の駅で湘南新宿ライナーに乗り、揺られている間にいろんな事を考える。正直言って厳しい。
整理中に出てきた数多くの写真。
父の若い頃の仕事中のものや、兄夫婦との北海道旅行、伊豆の旅行もあった。思い出がこんなに記録に残っているのに、父はそれらを思い出す事なんて無いだろう。そんな思いの中でいちばんツラかったのは、父の田舎の小学校の校舎と思われる写真と、たぶん同窓生たちと思われる老人たちの集合写真だった。父は若い頃に家出同然で上京したまま、今まで一度も田舎には帰っていない。数年前、まだ母が生きていて、その介護に明け暮れていた父が、兄に言った事があるそうだ。
「秋田へ行きたい」
「同窓会があるんだ」
そんな時に母が他界する。もちろん父は葬儀やらなにやらで同窓会どころではなくなってしまった。その時の、翻弄される父の様子は今でも目に浮かぶ。もうあの時から父は生きる元気を失っていた……
あまりにも滅入ってしまい、何か気晴らしになる事はないかと考え、途中の渋谷で降りた。YAMAHAに行って新しいスティックを買おうと思い立ったからだ。そして店内に入り、スティックをあれこれ手に取って見ていたら……
横から肩を叩かれた。相手を見てビックリ
ディープ・パープル・セッションで共にドラムを担当したmaruさんだった(笑)。つい一昨日にもはみだしセッションで会ったばかりだった。聞くと品川の自宅から渋谷まで「健康のため歩いてきた」という。歩くかあの距離を普通っ
こんな偶然があるだろうか。片や横浜から帰る途中に思いつきで立ち寄り、片や延々散歩した終点にたまたま立ち寄ったその店で、二人のドラマーが巡り会うなんて
もうお互い楽しくなってしまい、そこからカフェで延々二時間ほどしゃべりまくった。
「うちも親父がちょっとねぇ」
「俺もツインペダル買っちゃったよぉ」
と、お互い似たり寄ったりの状況に笑ってしまい、しかも共通のバンドに悩まされた過去があったりと、岬とmaruさんは妙なつながりがあったりするのだ(知る人ぞ知るって話だけどさ・笑)。そんなこんなでどの話をしても楽しいし大笑いである。その後、渋谷で最も気の利いたドラムショップを教えてもらい、
「行ってみようか」
と一緒に行って買い物をし、駅前で別れた時は6時を回っていた。
maruさんは岬のスピーディなドラミングと違って物凄く重くてパワフルなドラミングを聞かせてくれる。セッションには必ず小ぶりなシンバルを数多く持参してくれて、ドラマーとしては物凄く嬉しいセットが組みあがったりする。男気あふれるというかなんと言うか(笑)。面白いひとなのである。
帰りの電車で、昨日・今日と、父の家のことで滅入っていた気分がきれいさっぱり晴れていたことに気付いた。もちろんそれはそれ、これはこれという仕切り感はあるにせよ、とても幸せな気分になれた。
ありがとうmaruさん……と言うのも変なんだよね。今日の出会いは偶然なんだから。でも、こういう仲間がどんどん増えて来ているのは事実。そういえば先日、はみだしセッションの時にすまいるさんがこんな事を言ってた。
「私、この歳になってから人生がこんなに楽しくなるなんて思ってなかった」
ほんと、その通りだって思いました。音楽やっててホント良かったって思いましたよ。うん。
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