テレビの中の女子中学生たちがカメラに向かって口々にしゃべっていた。
「20才(はたち)までには結婚したーい!」
「えー?!やだ私けっこーん!」
「なんでー?!」
中学生たちは卒業証書の収められた筒を振り回しながら奔放に続けていた。
「だって子供生んで育てるなんてチョーめんどージャーン」
「あはははははは!!」
「でしょー!で、すぐに老けておばんになっちゃうんだよ。やだアタシおばん」
「おばんヤダー!」
「なに言ってんの!アンタもうおばんジャン!」
「えっ?!」
「中学出たらもーおばんだよー!」
「ええー!」
ブツ、と静電気を帯びた音と同時に画面と音が闇に変わった。テレビ台の中のVHSのビデオデッキからテープがスライドして出た。
引き抜いたおばんは、そのテープをケースに入れた。
今朝ゴミを出したばかりのからっぽのゴミ箱に投げた。プラチックのゴミ箱は素っ頓狂な音を立てて飲み込んだ。
おばんは、そのままゴミ箱を眺めていた。何をするでもなく、ゴミ箱を見つめていた。
そのまま、数分。カップ麺が出来上がるくらいの時間はゆうに経った頃、おばんは腰をかがめてゴミ箱からビデオテープを取り出した。
テープのケースの背タイトルにはこうあった。
『S53.3.19. 卒業式の日 あいかちゃんと』
おばんは深いため息をつきながらテープをテレビの上に置いた。女物で占められた部屋干しの下着の下をくぐり、ワンルームの隅にある小ぶりな洗面台の前で化粧をし始めた。
男っ気の皆無な部屋で、おばんは泣いた。
泣きながらの貌には、どんなウォータープルーフも乗らなかった。
つづく
おっと。。
岬さん。。。
お忙しいのは、音楽でプロになるのでは無く・・・・
小説家。でしたか??
恐れ入りました。
これ、映像にしたら面白いね。。
投稿情報: hagu | 2008年6 月11日 (水) 午後 01時39分
ラスト、ちょっと可哀相すぎましたかね?(笑)
投稿情報: 岬 | 2008年6 月12日 (木) 午前 01時11分
”おばん”をもう少し幸せにしてあげましょうよ(苦笑)
投稿情報: エレガンス | 2008年6 月12日 (木) 午後 11時10分
了解しました(笑)。
次は幸せなお話にしてあげましょうね!
いやしかし・・・・・・岬に書けるかな、幸せな話なんて・・・・・・
投稿情報: 岬 | 2008年6 月13日 (金) 午前 12時50分