仮面ライダーというのは、僕らの世代にとっては完全にヒーローでありました。
ヒーローの定義とは何ぞや……と言い出すと、いろいろな答えが出てくると思うんですが、僕の同人誌時代の盟友で偶然にも僕と同じ誕生日である深山女史(彼女の方がちょうどひとまわり下)は、『ヒーローはまず死んで、再生するところからがヒーローなのである』という、とても興味深い研究結果を発表されて、僕は『確かにその通りかも』と妙に納得したもんでした。
考えてみると、僕らにとってのヒーローっていうのは本当にそうで、ウルトラマンもゴジラも最初に必ず『死』という描写が付いて回るんですね。
で、仮面ライダーっていうのは、ショッカーに人体改造された本郷猛が、脳改造される寸前に逃げ出してからがドラマで、死んではいないものの、『人間という人生からは完全にはみ出した存在』にされてしまったわけです。これ、見方を現実に置き換えると、『交通事故に遇って車イス生活を余儀なくされた被害者が世の中から交通事故を無くそうと孤軍奮闘する物語』になりますよね。つまり、描き方こそ荒唐無稽ではありますが、底辺にはしっかりとテーマが据えられているわけです。こういうものを子供たちは知らず知らずのうちにでも、うっすらと受け止めていって、将来『他人の痛みのわかる大人』になるわけです。子供番組の構造はこうでなくてはいけません。
さて、ヒーローとは……なんて書き出しといてこんな事を書くと変かもしれませんが、『復讐するヒーロー』っていうのもいるんですよね。悪の被害に遇って、復讐に立ち上がるという構図のヒーロー。正義のためというよりも、自分の腹いせとして悪の討伐に出向くわけです。当然、復讐なんてものは子供の教育上よくないものとされがちです。でも、主人公が子供たちと一緒に『復讐する心で戦って勝っても、虚しいだけだ』と気付き、正義に目覚めていく……こういう展開になれば、それは子供たちにもしっかり伝わるんです。この展開を見せてくれたのが三人目の仮面ライダー『V3』だったんです。
風見志郎は愛する両親と妹を悪の組織に殺され、自身も瀕死の重傷を負います。先輩である本郷や一文字隼人たちの正体を偶然にも知った彼は、『復讐のため、自分を改造してくれ』と懇願します。そんな事のために人体改造なんかしたくない本郷たちですが、死ぬ寸前の風見を助けるには改造しか手が無かったわけです。こうして三人目のライダーとして風見は再生するんですが、復讐にやっきになるあまり、当初は無謀な戦いをするわけです。それを見越していたのか、先輩であるダブルライダーは、V3の体に秘めた26の秘密のうちのひとつに超必殺技『逆ダブルタイフーン』を用意していました。仕方ない状況とはいえ、それを使ってしまった場合、全エネルギーを使い切ってしまうため『三時間は変身できない』という条件も隠されていました。
なんという良心的な展開でしょう。主人公は復讐に燃え、暴走して、自分の身を危険にさらすことになり、そんなこんなの中で気付いていくんです。そしてドラマの終盤、今度は悪の組織に裏切られた研究者が復讐に燃えて組織と戦おうとするのに接し、『それではいけない。お前は正義のために戦うべきだ』と諭すんです。
見事な展開です。歴代ライダー史上、一位の視聴率を稼いだだけのことはあります(笑)。
で……
秋に公開される映画に『V3』がリニューアルで復活します。
しかしその出自に驚いた……今度のV3は悪の組織に改造され、仮面ライダー1号・2号を抹殺するために姿を現すんです。
ちょっと待て!
それ、仮面ライダー2号の登場と同じ展開やんっ!!
リニューアルっていうのはとっても罪ですね。
ハリウッドのバットマンとかスパイダーマンとかってーのは作られるたびにいいものが出てきますけれど、日本はどうしてこう……オリジナルの良さを破壊してまわるのか……
電王が面白いだけに、余計虚しい気持ちがします。こんなことならリニューアルなんかせんでほしいな。
いや、単なる長い愚痴でした(笑)。
オリジナルを知らなくても、なんとなくオリジナルの雰囲気とか想像できるような作品っていいですね。
私は「バットマン」を映画館へ見に行ったことがあります。原作は知りませんでしたが、最新のテクノロジーを駆使しつつ、なんとなく古めかしい雰囲気が感じられとてもよかったです。。今回のV3もオリジナルを知らない世代が見て古きよき時代の雰囲気を感じ取れるといいですがね。
おそらく岬さんのおっしゃるとおり、リメイク版が日本ではあまりよいものがない気がするのが演技力のある素晴らしい俳優さんがいないせいかもしれません。バットマンシリーズで3作目の「バットマン・フォーエバー」(でしたっけ)で悪役の一人を演じたのがジム・キャリー。彼のイカレタ悪の天才ぶりは、見ていて鳥肌が立ちました。日本にはそんな演技をできる俳優さんは残念ながら一人もいないと思います。
投稿情報: カイワレまきまき | 2007年7 月 7日 (土) 午前 10時26分
演技という観点ですと、『俳優』と呼べる人がまず少ない気がしますよね。『タレント』はたくさんいますけど。
ただ、これも言えると思いませんか。
『芯の通った演技指導のできる演出家(監督)が少ない』
しっかり説明して指導してあげればできる人は多いんですよ、きっと。ポッと出の『アイドル』であってもそう。いまどきのアイドルやモデルさんたちって、演技経験とか無くてもキチッと教えればそれなりに演技します。でも、カメラを覗いて客観的に演技を見ている監督たちが、事細かな動きや感情の流れなんかを適切に指導できないんでしょうね。
それと、日本のドラマ作りって変に割り切った演出が多いですよね。『アクション映画なんだからそこの感情はそれほどこだわらなくてもいい』とか、『恋愛映画なんだから非現実的な偶然性よりも盛り上がりを優先したい』とか。
どんなカテゴリーにあてはめたとしても、そこに描かれているのは『人間』であって、まず『人間の生活』が描かれていないと、どれだけ盛り上がるドラマであっても、感情移入はしづらくなりますよね。
そういう……観客に対する『思いやり』っていうのは、絶対必要と思うんですよねぇ。
話は変わりますが、『バットマン』の2本目(『バットマン・リターンズ』だっけかな?)のラスト。死んでしまったと思われたキャットウーマンのシルエットが立ち上がったところでバン!!と終わるじゃないですか。あれは震えましたね!!拍手喝采モンでした。
投稿情報: 岬 | 2007年7 月 7日 (土) 午後 12時35分
私、この映画のコトはニュースで観たんですけど・・・たしか、年齢制限があるとか。。。(。。;)
最近、子どもにわかりにくい、大人ウケの特撮作品が増えていて・・・それはそれで、面白かったり、年齢が高くなって「あぁ、そぅいぅコトだったのか!」と納得できたりするコトができるので、一長一短の良さがあると思ってたんですけど・・・。
子どもはとにかく、ヒーローがカッコよく戦っていればいいってカンジなので。。。(^^;)
だから、ムズかしい話でも、そこから何か得てくれればいいとかんがえてたんですけど・・・。
でも、年齢制限アリかぁ。。。
うぅぅ~ん、、、子どもを持つ身としてはちょっと・・・受け入れにくいナァ。。。
いろいろと仕方がないのかなァ。。。(ーxー;)
投稿情報: 葵女子♪ | 2007年7 月 7日 (土) 午後 12時48分
残念ながらPG-12だそうで(笑)。
バイオレンスな表現を追及っていうのも解らないわけではないんです。
そういう面での物足りなさを感じてきたかつてのファンが、いまや牽引力となっているわけですから。
ただ、それとは別に、そういう描写に頼らずとも、伝えたい事を伝ていく……そういうのがプロの作品であるとも言えるんじゃないでしょうか。
僕も昔、仮面ライダーのリニューアル二次創作を書いたことありますけど、当時は完全に大人向け仕様にしてしまいました。残酷描写が山ほど出てきたりするんですよ。
でも、最近は考えが変わりましたね。
やっぱり『ヒーロー』っていうのは子供たちのためにこそ必要な存在で、『ヒーロー作品』というのも、将来、ことの善悪を見極めて、どう対処していくことが正しいのかを教えるものでなければならないはずなんです。であれば、無用な残酷描写は『直接見せないで済ます演出』を心掛けるべきなんですよね。
まぁ、今度の映画はまず大人の目で見て、それから判断して大丈夫そうなら子供さんにも見せてあげるという……そういう事で……仕方ないんでしょうねぇ。
それはそれで、大人は公然と『二回見られる』ワケで(おおっ!!いや、そういう事で喜んじゃいけないか・笑)。
投稿情報: 岬 | 2007年7 月 7日 (土) 午後 01時05分
お久しぶりです。
・・・ええと、今回のV3はショッカーライダーのひとり、と考えればいいのでしょうか・・・(もうすでにV3じゃなくてもいいんじゃ?と言う気が・・・)
「仮面ライダー」の脚本家は井上敏樹以外にも、他にもちゃんと書ける人いると思うんですけどねえ・・・。・・・あの人では父親を超えることはできないと思います。
投稿情報: 結城小太郎 | 2007年7 月 7日 (土) 午後 10時22分
おやっ?!よくここが解りましたね!(笑)
連絡しようと思っていたんですが、手間が省けました!よーこそ小太郎殿!しょっちゅう来てね(笑)。
そーだよねー。井上さんのホンは面白い時もあるけれど、連続モノの中で発揮できるちからワザだしねぇ。単発モノでは浮いたドラマにしかならないよねー。
どうして東映はあの息子にあんな肩入れするのかねー?
わからん……
投稿情報: 岬 | 2007年7 月 7日 (土) 午後 11時16分
V3のオリジナル版だと、V3自身に復讐色が薄れた後に「ライダーマン」が現れるというのが絶妙なんですよね。
「リニューアル」と「続編」を同じに捉えてはいけませんが、どれだけ過去の作品を大事にするか、どれだけ新作の新作らしさを追及するかのバランスは非常に難しいと思いまして、その点で「メビウス」は頑張ってたなと思うわけです。
完璧ではないにしろ、ね。
投稿情報: Tommy | 2007年7 月 8日 (日) 午前 12時15分
ハイ。メビウスは非常に頑張った作品でしたよね。その点は物凄く評価できます。
だって大して興味の無かったお父さんたちが、子供を連れて行って映画見て、昔を思い出して泣いて帰ってきたってんですから!
僕はまったく違う観点で見てしまったんで首をひねる結果になってしまいましたが、このライダーのドラマ作りの姿勢と比較してしまうと、圧倒的にウルトラシリーズはドラマが良心的ですよね。
投稿情報: 岬 | 2007年7 月 8日 (日) 午前 02時07分