夜中に室内を徘徊し、開けっ放しのトイレも認識せずに放尿してしまう父。眠れない兄貴たちの心労は筆舌に尽くしがたく、声を荒げる事も出てきた……
情けないが双方限界のようだ。
すがる気持ちでケア・マネージャーという職の方に会いに出向いた……だが、約束の相手は風邪をひいたとかで休んでしまった。万事休すか。
しかし代わりのマネージャーが来られた。
この人の事は一生忘れないだろう。素晴らしい働きをする人だった。
岬と兄の窮状を先入観なしに聞いてくれ、質問は的確ですべてを理解してくれた。まだ意識がはっきりしていた時に受けた介護認定レベルは『要支援1』。だが今のレベルは『要介護2』くらいに該当するはずと判断。(ちなみにレベルは軽い方から『要支援1』『2』『要介護1』~『5』とあるらしく支援レベルでは施設入所なんか許されない。介護を必要としているひとたちは巷にあふれているのだ……)
普通なら認定レベルを上げるまではどこも受け入れてくれない難しい状況を、顔と経験とを武器に施設に根気強く交渉してくれ、なんと『今日から24日までならとりあえずOK』というショートステイ先を見つけてくれた。ただし夕方までに来てくれと言われてしまう……
ケアマネージャーは即座に動きだす。我々を車に乗せて家まで移動し、父の状態を素早く観察し、施設まで送り届けてくれた。施設のスタッフとのカンファレンスでは、しどろもどろな我々に代わって詳細な説明をしてくれた。
情けない言い方だが、兄貴たちはこれで安心して眠れる。
ひとを助けるという事はこういうことなのだと、改めて知った。
書類の整理や作成やFAX送信など、仕事が山のように溜まったマネージャーは一足先に帰っていった。我々は入所生活に必要なものを買い足し、部屋に補充しに戻った。父は食堂で食事の最中だった。
無心に食べていた。
兄も岬も顔を見せずに施設を出た。
帰りの電車に乗る頃にはもう夜になっていた。くたくただった。揺られているさなか、思わず口にした言葉。
「なんかさ……犬や猫を捨ててきたみたいな感じだね」
兄は苦笑し、後は無言だった。
本当の闘いはこれからなはずだけど、この時ばかりはどうしようもなく涙が出た。
辛いのはわかりますけど、もうどうしようもない段階まで来ているのでしょう・・・・お察しします。でなけりゃ、みんなで病気になっちゃいますよ。
お父様だって、家族に負担をかけるのは本望ではないはず。
投稿情報: 軍曹 | 2008年4 月20日 (日) 午後 12時33分
そうです。あの親父は迷惑をかけるしかない今の自分がいちばん許せないでしょうね。
とにかく気持ちを切り替えて前へ前へと進みたいと思います。
しかし当然な事だけど、やるせないねぇ(笑)。
投稿情報: 岬 | 2008年4 月20日 (日) 午後 03時32分
ケアマネさんというのは、僕も仕事上よくお世話になっています。
介護保険のケアに関する様々なお世話をなさる仕事で、僕も試験を受けてみようと勉強してみたことがありますが、いや、これが法律関係とか難しくて。
老人性欝、という用語がありますが、高齢者の方に何がストレスかといって、自分に出来たはずのことが自分で出来なくなることがお辛いのではないかと思います。
このご時勢、後期高齢者医療制度などといって高齢者の方をいじめる政策を国は取りますが、介護なさる方がつぶれてしまっては元も子もないので、利用できる制度や施設は胸を張って使いましょうよ。
ネガティブに考えないで。
どういうサービスが制度的に利用できるのか、費用はどうなるのか、手続きはどうなるのか、などの「ケア」についての「マネージメント」は「ケアマネージャー」さんがやってくださいますからね!
投稿情報: Tommy | 2008年4 月20日 (日) 午後 09時07分
だよねー。今回本当にケアマネさんという職種のありがたさを知ったよー。
今までちんぷんかんぷんだった部分を理路整然と教えてくれて、何をしなきゃいけないのかも理解できた。
物理的に時間が経たないと進まない事以外は、たいていその日のうちに終わってしまったし……
ありがたいお仕事だなぁと思いました。マジで。
投稿情報: 岬 | 2008年4 月21日 (月) 午前 12時00分
>この時ばかりはどうしようもなく涙が出た。
以前訳あって幼い子供二人を施設に預けに行く人に、頼まれて同行した事がありました。
土日は連れて帰れるといっても3才と8ケ月の子達にはもの凄い衝撃。
涙と鼻水とよだれを出しながらしゃがみ込んで廊下に爪を立てて
「嫌だ家に帰る、パパ帰る置いていかないで、 おとうさん帰りたい」
叫び続けているその子に背を向けて何も言わず施設を出てきました。
他人事ながら涙が出てきました。
投稿情報: 黙ってれおん! | 2008年4 月21日 (月) 午前 08時08分
うちもお兄さんちに近い状況になってきてます。
ヨメさんのことも心配です。
投稿情報: いぶくろう | 2008年4 月21日 (月) 午前 10時11分
私のお客さんは・・・
ケアマネ、であったり
介護士さんであったり・・・
そんな・・・仕事をされている方々です。
私の店が、そんな人達の「気休めの場所」である事を
願っています。
困っている人達の・・ケアを完璧にして貰う為には・・
その方達にも、リラックスが必要ですからね。。。
そのお手伝いが出来たら。。。。幸せです。
岬さん。。。
先が見えない、状況は辛いですよね。。
お察しします。
頑張らなくちゃ、乗り越えられない現実だけど・・・
頑張らなくて・・いいんですよ。。。。
投稿情報: hagu | 2008年4 月21日 (月) 午後 03時15分
『頑張れ』と『頑張るな』。
確かにこれ、うまく使い分けないといけない、そんな世の中ですよね。
幸い、岬はまだ『頑張れそう』なんですよ。最近本当に解ってきたんですが、ここに恥ずかしながら泣き言を書いてますけど、皆さんに応援されたりどつかれたり(笑)されてると頑張れるんですね。まだまだ平気。しんどいところに来たら絶対休みますし、泣き言を書きます。その時はまた、応援したりどついたり(笑)して下さい。
岬だけでなく、本当に皆さん、個々の生活の中で頑張ってますよね。
そういう仲間が大勢いるのが今の岬の強みと思います。
投稿情報: 岬 | 2008年4 月22日 (火) 午前 12時54分
痴呆と介護。これは人類が未だ経験したことのないほどの高齢化社会の先頭を走る日本という国が抱えている超難題です。しかしその現場で苦しむ家族の辛さは、経験した者でなければわからないし、社会や国のケア・補助・制度というものが全く足りないという、とんでもない状況にあります。
岬さんもご存じのように、我が家も介護を数年間経験しました。痴呆はほどんどなかったのですが、歩行がままならない・身体のバランスを簡単に崩す、という老人が一瞬の隙をついて転倒し、大怪我をする、という点では、徘徊する痴呆者やある意味目を離せない幼児とも共通するものがあります。
こちら側も最初はまだ体力も気力もあるんです。ところがこれがどんどん奪われていきます。でも肉親の場合、それを止めることがなかなかできない。まだ頑張れる、と思っているうちに、こちらの方が心身を病んでいきます。限界だなと感じ始めた時は、もうギリギリに近い。うちはそこでちょうどピリオドが打たれましたが、あとちょっとそのままだったら、共倒れだったかも知れません。
岬さんのブログとほぼ時を同じくして、以前一緒に仕事をした人と数年ぶりにメールを交わしたら、介護で心身ボロボロ、と書いてありました。私達の上の世代、すなわち、親の世代は、そのさらに親の世代の平均寿命がまだ60代後半から70代前半だったと思われるので、介護が多く発生する年齢まで行かない。それが平均寿命が80歳を超える時代となり、日本中で悲劇的な介護の状況が生まれています。介護される側、する側、どちらにとってもつらい状況が。
正直、解決のいい方法、ベストの方法はありません。ただ、、、介護の制度を徹底的に調べ、使えるものは使うことをまずやってください。結構使えるものがあるんです。またその助けをしてくれるのは、もちろんケアマネージャーです(結構交代があるので注意が必要です)。
それからもうひとつ。介護の手法を勉強する(知っている)と全然疲れ方が違います。身体の自由が効かなくなっている大人を動かす時、何も知らない人が腕力だけでやろうとすると難しく、また腰をやられます。ところが、コツを学んでおくと、驚くほど力をかけずに身体を動かすことができます。これだけでもストレスや疲れ方が全く違うのです。
介護はいつまで続くかわかりません。それだけに、無駄を極力排し、有効的な手段と援助を取り入れるようにしてみてください。「我々には仕事もあるので、そこまでやってられないよ、まだ元気があるからとりあえず頑張ってみる」では、必ず底なし沼に落ちていきます。まず気力がある今のうちに、介護について調べ、学んでください。必ず大きな差が出ます。
投稿情報: takorasu | 2008年4 月22日 (火) 午後 11時42分