正月休みの最終日。
昔からの同人仲間の『サンザイオー結城氏』と『しちせい氏』と三人でお出かけ。
場所は秋葉原。そう、かつて日本が世界に誇った『電化製品』の街。だが今は違う。『アニメ』『ヲタク』という新世紀文化とも言える特異な価値観を世界に発信する、超先鋭都市である。アニメやゲームのありとあらゆるキャラクターたちと目に見えぬ膨大な電磁波に彩られた街……そこに行き交う消費者の多くは『秋葉系』と呼ばれる。では我々三名はやはり秋葉系なのか……いや違う。紙袋も持たず、変に太ってもいない。妙にニヤニヤもしていない。ちゃんと風呂にも入っている。だがしかし、世間の多くの人々は秋葉原を誤解している。かつて敬虔なる宗教信者たちが魔女狩りという誤った行為に走ったのと同じく、現在の世間の多くの好奇の目がこの街に注がれている。
何が間違っているのか。
その根幹を知った一日であった。以下はそのレポートである。
10時30分。
ラジオ会館の前で待ち合わせ。結城氏とは時々ハロプロのライブで会っていたが、しちせい氏は数年ぶり。懐かしく、嬉しい再会だった。
三人で街をフラフラとブラつく。目的は定まってはいたが、まずはブラブラ。久々の秋葉原は……汚かった。それはそうだ。正月の間、ゴミの回収が無い。だが街を訪れる消費者たちはゴミを出す。歩道のあっちこっちにゴミの山が無数に存在する。そんな中を、来訪者たちは器用にゴミと人ごみをかき分けて進む。
到着。ドンキホーテ。そう、有名なディスカウントショップである。『ジャ~ング~ルだ~♪』なんてテーマソングを流していたら放火に遭い、ところ狭しと積み上げられた商品のジャングルによって逃げ惑う客たちの足を留めてしまったという、笑うに笑えない過去を持つ一大チェーン。しかし、この店に用事は無い。あるのはここの上。
そうだ遂に来た秋葉原といえばこれコレといえば秋葉原
日本中の男子、いや、世界中の男子が『羨望』と『欲望』と『陰謀』と『野望』を胸に、『死ぬまでに一度は行ってみたい』と誰に言うともなく心の奥底で思う(ハズ)、『夢』と『ロマン』と『恥じらい』と『至福感』を、まるで『ヴィックス・ヴェポラップ』のように男たちの寂しい心に優しく丁寧に塗り込んでくれるような、まさに秋葉文化が世の男たちに向けて放った『精神的波動砲』
メイド喫茶であるっ!!
到着した時刻は10時45分。店は11時から。
店の入り口に並ぶイスに腰掛けて待つ。我々の前に二人。連れ合いではなく、個々に来た客だ。一人で気軽に来れるほど、その雰囲気はリラックスできるものなのだろうか? 恥ずかしながらわれら三人は顔こそ笑っているが明らかに緊張している。なぜこんなに緊張するのか。緊張して金を払うなんて理不尽はなはだしいが、来たのは誰だ? 来たのは我々だ。文句を言う筋合いではない、
そうこうしているうちに準備万端のメイドさんたちが店に入る。このとき、待っている客の前を小走りに通るのだが……
かっ……カワイイっ( ̄▽ ̄;
思わず笑ってしまった。ニヤケるなんて生易しいもんじゃない。笑ってしまうのだ。いや、やましい想像とか感情とかで笑ったわけじゃない。誤解を避けるため、ここはハッキリ書いておきたい。
幸せを感じてしまうのだよ!(笑)
そりゃ確かにメイド服の持つ破壊力は並大抵のもんじゃない。恐ろしい勢いで分泌されたドーパミンの海に脳ミソが浮いちゃうくらいの一撃必殺モノの破壊力だ。だがそれだけじゃない。バカみたいな理由だがあえて書く。
みんなきれいなんだよっ!!(怒笑)
鼻先をかぼそいなまあしが走っていったそれだけでもうお腹いっぱいなのに、彼女たちは開店前にメニューを持って出てきて我々の前にひざまずく。
「ご主人様、リビングとカウンターがございますがどちらになさいますか?」
そう。店内の席は二種類用意されているのだ。ここで我々は大きなミスをする。が、今は置いといて……
開店と同時に個々の客を店に招じ入れるメイドさんたち。
「ご主人様のお帰りでーす!」
「お帰りなさいませご主人さまー!!」
……こういう時、人は笑ってしまうのだよ、マジな話。
そりゃ恥ずかしさもあるし、どこか冷静でいてこういうサービスを小ばかにする事で理性を保とうとする気持ちもあるんだけれど、直接自分たちのために身近でこれを言われると、まったく悪い気がしないのだ。
そして飲み物を注文。よく知られたことだけど、例えばホットコーヒーなんかには、メイドさんがスティックシュガーの封を切ってそそそと入れてくれ、スプーンで優しくクルクルと(決してガチャガチャとではない)かき混ぜてくれる。至れり尽くせりとはまさにこの事で、これを読んでくれている方はよーーーーーーーっく考えてみてほしい。この『至れり尽くせり』という行為を受けた事って、してあげた事って、今までにどんだけありますか?(笑)
だがここで結城氏に災難が、いや、幸福の時が訪れる!
ミルクを入れてくれるのだが……
「ご主人様、お入れしますので良ろしいところで『ニャン』とおっしゃって下さい」
この時の結城氏の顔を僕は忘れない。谷底に突き落とされたかの様な絶望。しかもネコの手真似まで強要されている。どうする結城氏?
「・・・・・・・・・・・・・・・ニャン」
幸福ならぬ、降伏の時であったな、結城氏。しかし君はえらい!場の空気を保ったのだ!大人だよ、うん。
さて、リビングを選んだ事による失敗だが、このタイミングで発露する。そう! この席はジャンケンゲームができないのだっ!! なぜかは知らぬができないのだっ!!!!
ジャンケンゲーム……別に野球拳でも何でもない、単なるジャンケンゲームである。だがしかし!単なるジャンケンをして楽しいはずがないなどと思うなかれっ!
彼女たちとだったら楽しいに決まってるんだよっ!!
いや、これは洗脳されたとかそういう次元の話じゃない。行けば解る!その場にいれば解るのだ!このコたちとだったら世間話するだけでも楽しいのだ。実際しちせい氏が飲み物をかき混ぜてもらっているとき少しお話をしたのだが、内容はたわいもない。
「お正月は今日からなんですか?」
「いえ、1日からでした」
「じゃあこれからお正月休みだね」
「メイドにお休みはございません」
……こんな調子で徹底されて、楽しくないわけがない!
で、その後は普通に飲み物を飲みながら三人でさんざんしゃべってました。その間、他のお客さんを招くたびに「ご主人様のお帰りでーす!」「お帰りなさいませご主人さまー!」の声が上がるんですが、慣れてくると普通の喫茶店とたいして変わらないことに気付きます。席の周りを忙しく立ち回るウェイトレスさんがメイドさんなだけ。なのにこの至福感はなんなのだろう……
店を出ようとして、清算はテーブルでと教えられ、払った金額は三人で3000円。ひとり1000円。その内訳は『ご帰宅料500円と飲み物500円』。そうか。帰宅料という形でテーブルチャージを取っているわけだ。しかし高いとかボラれたとかの意識はまったく無い。公正価格である。あれだけお客さん、いやご主人様を楽しませてくれてこの金額ならむしろ安い
ここでいくつかのアイテムをご紹介(笑)。あ、写真は全部クリックすると大きくなりますので、よくご覧下さい。
まずペーパータオル。左上に注目。
ちゃんと「おかえりなさいませご主人様」と書かれています。
これはコースター。
厚紙製ですが表面が柔らかい加工になっていていい感じです(笑)。
そしてこの次がちょっとスゴイ(笑)。
ライセンス・カード
来店するたびにポイントが増える。
いや、増えてどーなるのって話はよく覚えていないんですが(笑)。
でも、店のサイトを覗いたらこんな事が書いてありました。
「ゴールドカードはじめました」
なるほど。ランクアップしていくわけだ。
いやぁしかし、ちょっとどころか、かなり感動して帰って参りましたよ。はい。
実は店を出てしばらくしてから、某モ●バーガーに寄って食事したんですけどね、ここでとんでもない事に気付いて愕然としたんですよ。
注文した品をテーブルに持ってきてくれた店員さんがね、「おまたせしました。ごゆっくりどうぞ」と言ってくれるわけです。文面に書いたら一緒ですよね。まったく違いなんかありません。でもその際の立ち居振る舞い、言葉の強弱、お客様に与える印象、そのどれもが最低レベルに感じるんです。何度か来たので冷静に見直しました。普通といえば普通。でもその普通は、もう僕らから見ると最低なんです。言葉は強い。抑揚は無い。店内を風切って歩く。心がこもっていないのがありあり見える……
メイドさんたちは徹底された教育でご主人様たちに奉仕してましたが、その行為のどこかに一瞬でも嫌な顔やつまらなそうな表情を見せたらアウトですよね。でも絶対それを見せない。完璧に仕事をこなしていました。
バーガー屋の店員さんは嫌な顔したところで誰も文句は言いませんが、だからって当然の権利のように心に響かない接客を繰り返している……
どちらがサービス業のプロかと問われたら、間違いなくメイドさんたちです。つまりメイド喫茶って言うのは、世間に忘れ去られつつある「サービスの根幹」を、改めて知らしめてくれる絶好の場所なんです。これはひいきではなく、真面目な話で書いてます。
秋葉系とかそこに展開する異端文化を斜めに見る目より、そこにある本質を見抜いて自身の糧とする。そういう意識を持つことは大事と思う。我々は多かれ少なかれ「サービス」を要求される仕事に就いている。ならばだ。「ご主人様」と言わないまでも、そういう接し方のできる仕事をし、それができることによって自身に誇りを持てるように努力すべきなのだ。
秋葉原のメイド喫茶。恐るべきプロのサービス集団がそこにいる。
これを読んで笑った方。経験してみるといい。絶対感動できるから。実際女性客も多く、リピーターも多い。僕もまた秋葉に行ったら、たぶん、いや、間違いなくこの店に行くと思う。慣れればくつろげるんだもん、マジで。
さて、今回の秋葉巡りはこの店だけで終わりましたが(このあと飲みに行っちゃいましたので・笑)、次回は『もうひとつの別世界』、『サービス業界の異端児』、『疾風怒濤の接客と自己の理性の強さが試せる桃色な異常空間』に挑みたいと思います……
今度こそ行くぞ!
『ツンデレ喫茶』へっ!!
つづく (いつになるかは解らないけれど・笑)
あ、このお店のサイトはココ(笑)。
http://www.cafe-athome.com/
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