土曜の午後、海賊さんと渋谷で会った。
海賊さんのコンタクトレンズの購入に付き合い、自分のメガネのレンズ交換に付き合ってもらい、前回同様YAMAHAなんかにも寄らせてもらった。
渋谷の街は女子高生や若者たちがあっちでもこっちでも集団を組んでいて、良くも悪くも若いエネルギーに満ちている。何が楽しくて誰のことを好きでその集団にいるのか、そんな事は通りすがりの大人には皆目見当はつかない。でも、とにかく今の若者たちの文化の最先端を垣間見ての感想は、「こうやって遊びながらでも、いろいろな事を知って『大人』になってほしいな」なんて感じ……
あぁ、自分も本格的に『おっさん化』したなぁなんて、そんな自覚もさせられたりする。
晩に寿司を食べた。寿司といっても回転寿司。渋谷ではけっこう美味い店……だったはずだった。
が……あれこれと値上がりの一途を辿っているこのご時世である。ネタもしゃりも妙に小ぶりに変化していた。人気の店内は相変わらず混んでいて、ひとりの食事時間は30分で7皿以上のノルマが課せられている。時間と量が決められているなんてとんでもない店だ……でも、そんな条件を用意しなければ客がさばけないくらいの人気店なのだ。仕方が無い。
と……渋谷の生活様式に慣れている自分は、何の不満も持たずにこのルールの中で寿司を食べ、お茶を飲み、二人でバカな話をさんざんして店を出た。
まぁ積もる話もアレコレあるので、その後もカフェでお茶したりしたのだが、まぁなんと言うか、非常に平和な一日が過ぎていった。
そう。平和なのだ。日本は平和だ。政治が小学生レベルだったり、犯罪が凶悪化したり、テレビ番組に節度と節操がなくなっていても……いや、そうでいられるこのご時世だからこそそうだと言えるだろう。
日本は平和なんだ、と。
帰りに調布のTSUTAYAに寄った。半額だったので何か借りて帰ろうと思った。だがなかなか決まらない。そのまま店内で一時間を過ごした。これも平和な時間だった。で、ふと見つけた未見の映画を借りて店を出た。
そしてスーパーに立ち寄った。食料品売り場は深夜1時までやっている。切れていたインスタントコーヒーを選んでいたら、お試し期間でコーヒーカップの付いているものがあってそれを買った。
得した気分で帰った。深夜は冷えたが、今年初めて電気毛布の電源を入れた。暖かく眠れた。
昼近くに目が覚め、昨晩のドラマや今朝の仮面ライダーなんかの録画を見て、そばを茹でて食い、昨日買ったコーヒーを付いてきたカップで作り、レンタルしてきたDVDをセットした。なんとも平和な日曜日。
で、借りてきた映画のタイトルは
『となり町戦争』。
昔からファンの原田知世が出ている。公開時に観たくて、でも行けてなかった。
たいした予備知識も無く観た。原作ものだったようだが、そんな事も知らないまま観た。タイトルが笑える。となりの町との戦争である。ほのぼのしているじゃないか。映画自体もものすごく飄々とした滑り出しで始まる。男優の中では好きな部類の江口洋介が主人公。片田舎の駅で、旅行会社勤務の主人公が陳列棚のパンフレットを交換しに来る。仲のいい駅員とキャッチボールを始めたりする。平和である。
が、平和だったのはここまでだった。それは映画の中だけの話ではなく、観ている側を取り巻く人間社会そのものの根底が揺さぶられ、毎日感じている平和な気分が剥ぎ取られていく……そんな印象。
いや、この映画は怖い映画でもなければ、殺伐とした映画でもない。戦争描写なんかひとつも無い。血みどろの殺し合いも無ければ射撃だの砲撃だのも無い。
だが、観終わってみると、心のどこか深いところに、ひとつ大きな引き出しが作られた気がする。それは『表向きは解っていても実感として理解できていない社会における人間のもつ正義の脆弱さ』というもの……
戦争ってどんなもの?
殺し合いってどんなもの?
そんな基本的かつ謎だらけの『真理』の一端を目の当たりに見せ付けられる。平和な田舎の平和な生活の中に、当然のように生じて当然のように進んでいく『戦争』という行為。
これは目が覚める映画だ。平和ボケしていた自分の目が、笑える描写と優しい語り口で強引に『ひんむかれる』作品だ。
今年は『夕凪の街~』という名作に出会ってとても得をした年になったと感じていたけれど、こんな映画もあったのだ。
これは僕の中では名作の部類に位置付けられた。興味のある方は観て下さい。絶対得るものがあります!
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